飯野賢治とヨシナガの気になること。6と6.5 へ行った
飯野賢治とヨシナガの気になること。6
平成22年11月20日 新宿ロフトプラスワン。
昼からジムに出かけ、ベンチプレス、スクワット、ランニング、アームカール、ローイング、サイクリングなど一通りをこなす。運動をすることで本日の体調がわかる。今日は走ると息が上がり、重いバーベルを持っても息が上がる、つまり体調はすこぶる普通である。ペットボトル2本にプロテインを水で溶かしカバンに入れ、シャワーを浴びてから新宿へ向かう。本日はオールナイトでトークライブを見に行く日である。1年に2回、僕はこのライブを見に行くのが楽しみになっているのだ。
会場前で待ち合わせ。大学時代の友人ら合計4人が集まった。早速本日の作戦を立てる。会場は自由席、つまり早い物勝ちだ。チケットに記載された整理番号は20番代なので割といい席が取れるのではないか?と期待し、会場に入ってから迷わず良い席を選ぶための作戦を練るのだ。僕は今までの経験から、4人で座るにおそらく最適であろう場所をイメージし、それを的確に仲間に伝える。仲間は理解してくれたようだ。しかしチケットには、「夜の部のみ」と「夜から深夜まで通し」の2種類があり、それぞれに番号がある、つまり全体で40番目くらいであることを思い出した瞬間に僕の考えた作戦は廃案になった。おそらくいい席は取られているだろう。みんな、それぞれ好きな席に座ると良いよと。
新宿の建物の間に少し並んで、係の人の誘導されて会場へ入る。入り口でもらう全員プレゼントのエコバッグが良かった。ヨシナガさんと飯野さんがそれぞれデザインしたバッグである。かっこいい。これにMacBookAirを入れて持ち歩こうかなと考える。(家に帰ってから入れてみたらジャストサイズだ。)僕らが入った頃には狙った席はやはり埋まっていたが、ステージから割と近い机が使える席を得ることができた。
ふと周りを見渡すと、いつも見る顔を発見する。ただし、知り合いというのではなく、このイベントに来るたびに見かける人というだけだ。僕はこのイベントにはもう6回も参加しているので、僕と同様に何度も参加している人の顔はなんとなく覚えているのだ。ちょっと声をかけてみようかなと思いついたが、まあそれで何が始まるという訳でもないと思いとどまる。しかしこのイベント、日本各地から人が集まっているそうなので声をかけてみても面白かったかもしれない。普段の社会生活では絶対に会わないような人と知り合うチャンスなのかもしれない。しかし、社交的なイタリア人ではない僕はいつもそこで躊躇するのだ。
飯野賢治さんとヨシナガさんについて少し書いておこう。飯野賢治さんは今から10年以上前にゲーム業界に彗星のように登場し、革命児と言われた男。僕だけでなく多くの人がこの人は天才だと思ったに違いない。ヨシナガさんはハイブリッドワーカー。ハイブリッドと言ってもガソリンと電気の力で動くわけではなく、普通のサラリーマンをやりながら、インターネットを起点にして様々な活動をしているのだ。本を出版したり、最近ではどういう縁でか知らないが厚生省のエイズ撲滅キャンペーンに参加したりもしている。インターネットが生まれることで初めて可能になったであろう生き方を体現している人だ。
19時。本編が始まる。飯野さんmixのテーマ音楽が流れ、2人が登場した。このイベントの趣旨は2人が普段気になっていることを面白く発表するというものだ。飯野さんはmacのKeynoteというソフトを使い、ヨシナガさんはwindowsのパワーポイントを使う。今日は2人とも直前まで楽屋でスライドを作成していた人のこと。PCを抱えて席に着き、モニタへの接続を試みるが繋げるのに手こずり、ようやく画面が現れると会場から拍手が聞こえた。スタートから、ライブならではの緊張感を味わった。
2人のネタは今回も面白かった。僕が気に入ったのは、ヨシナガさんのiPhoneアプリネタだ。現代ではiPhoneでゲームを作ると日本だけでなく世界中に売ることが出来る。つまりそれは逆に考えると、日本以外の国で作られた素晴らしいアプリがあるはずだ。というとっかかりで、海外製のヤバいアホアプリを次々と紹介して行った。一方の飯野さんのネタは面白かったが、ここに書くには危険なものが多い。書けそうなネタの中には、次回イベントのサブタイトル命名権を、呼んでくる友達の多さでオークションするネタもあった。次回のイベントにより多くの人を呼んでくれるという人に、イベントのサブタイトルの命名権を譲ろうというものだ。結果、トップは4人呼ぶという方だったけれど、結局飯野さんとヨシナガさんが変更に変更を重ねて、変てこなサブタイトルになった。
休憩を挟みゲストの紹介コーナーに入る。このイベントの歴代ゲストは、ダダ漏れで有名なそらのさん、YouTubeで再生回数が100万を超えた活弁士の坂本頼光さんなど、非常に満足度の高い方達ばかりであった。今回のゲストはニコニコ動画の作品をきっかけにCDを発売して、オリコン7位に入ったプロデューサー、high_noteさんだ。ネット発のミュージックシーンの今について興味深い話を聞く。今回の作品は、ボーカルの方などとの連絡はネット上だけで、現実には一度も会ったことのないまま、CDが発売されたらしい。歌い手の方が録音した歌データをネットで送ってもらい、high_noteさんが編集することで音楽が生まれる。また、そこに絵師と言われる人が挿絵を描き、動画サイトにプロモーションビデオが掲載される。プロモーションビデオはそこに集まる様々な人に見られ、そのなかで評価されたものはさらに多くの人に見られていく。そしてCDが発売され、今まで動画を見ていた人たちが購入する。
オリコンに入ったというと、とても売れたものだと思ってしまうけれど実際には(わずか)数千枚程度だろう。オリコン入りした理由はこれが売れたからというだけでなく、周りが売れていないという事実がある。また、人々が実際に会うことなしに生まれた音楽というのも、これまでにあったはずだ。この話で何が新しいかというと、2つ思いついた。まず、テレビに頼らずにネット上でプロモーションが十分に働き、現実の世界に影響を与えられるようになってきているという点。そしてもう1つは、highnoteさんは昼はサラリーマンとして普通の企業に勤めているというところではないだろうか。専業ミュージシャンにならなくても、オリコンに作品が出る。音楽は趣味でokという音楽人も増えるだろうな。音楽で食べる必要がない。これは素晴らしいことだと思う。新しいものがどんどん出てくる可能性がある。ただし専業ミュージシャンには厳しい時代になるかもしれない。
あっという間に22時になり、本編が終了。そして24時からは「打ち上げ」と称したフリートークが始まる。この回は基本的に台本なしで進んでいく。
打ち上げは、まずヨシナガさんが来場者を増やすために梅チャーハンを1分で食べて母親に生電話をして初体験について語り、飯野さんが死にかけた経験について語った。死にかけた話はとてもリアリティがあった。飯野さんの話のクオリティを再現するのは僕には不可能なのでここに書かないほうがいいと思う。打ち上げのゲストはスクエニという会社のゲーム製作者さんだった。年齢はヨシナガさんと同じだと言っていたから31歳かと思う。僕とほとんど同じような年齢の人がゲーム作りの最前線に携わっているということにまず驚いた。もっと大人が作っているかと思っていたんだけど、僕の年齢がそれに追いついたんだ。(そういえば飯野さんのDの食卓は、飯野さんが今の僕よりも若い時に作られたのだなあ。)ネットにゲーム攻略の情報が溢れている状況における製作者とプレイヤーの関係性など、普段は聞けない話が聞けたと思う。
朝が近づき、最後に2人への質問コーナーが設けられた。ある25歳の方が質問をした。自分はとても面白くない仕事をしている、どうしたら良いだろうか、と。またある31歳の方からも質問が入る、自分は奨学金を借りて大学生をしているが、奨学金を返せるのだろうか、と。これらはヨシナガ氏、飯野賢治氏がやっていることに対する質問というより、質問者自らの人生相談のようなものだ。周りに大勢の人がいるなかでこうした自分自身にとって切実なことを質問するのは勇気がいることのように思う。しかし、挙手をして直接質問をすれば(これまでの経験上)ほとんどまともな回答をしてくれる。ヨシナガさんは論理的に、飯野さんはより熱く暖かく。それぞれ正面から受け止めて回答をしてくれる。僕はヨシナガさんに、iPadの使い方について質問しようかと考えていたのだけど、そのしょうもない質問を投げかけなくて良かったと思った。(*ヨシナガさんが蒼井そらさんにiPadの使い方を教えたらしいことをツイッターでキャッチしていたので、その使い方とは何かに興味があった。一体なんだろう。)
こうして10時間にも及ぶトークライブが終わった。年に2回、何かをクリエイトし続けている2人の話しを聞くのは刺激になる。ライブ感がたまらないし、ネットで今何が行われていて、どこに行こうとしているのかをキャッチするにもいい場所だと思う。また半年後も行こう。
おしまい。
メモ
その後、6時新宿発の電車に乗って会社に行き、仕事しました。ハードな2日間でした。
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