Shoko Zepp Tokyo
2011年4月9日 Zepp東京で行われた中川翔子さんのライブに行った。
午前中にジムに行き、昨年来の壁であったベンチプレス60kg10回3セットを達成。小さいことだが、個人的な目標を達成することは嬉しいことだ。
昼ごはんを食べて、時間通りに電車に乗り、まずは渋谷で散髪をする。地震が起こってから、都内に出たのは初めてだった。渋谷の街もなんとなく以前とは違っていて、昼間なのにどこか薄暗いような印象をうける。
美容師さんとも震災当日の話をした。当日の渋谷では家に帰れなくて、ホテルにも泊まれなくて、居酒屋のようなお店に泊まった人が大勢いるとか、夏には都内でも停電が行われるだろうから、今のうちから節電したりして慣れておかなければとか、そういう話をする。電車を廃止してSLにしたらどうですかねー。いやーうるさいし、煙がひどいし。特に地下鉄では止めておいた方がいいでしょう。など冗談も話した。しかし、被災地や原発のことは話題に上がらなかった。
Zepp東京へ向かう。山手線を乗り換えると、電車は空いている。お台場は前に来た時よりもずっと人が少なかった。車の展示場が近くにあるのだけれど、ほとんど人がいなかった。普段多く生息すると思われるカッポー(カップルのこと)もあまり見かけない。親子連れがいて、子どもが柱の陰に隠れたり、追いかけっこしたりして遊んでいた。無邪気な子どもが微笑ましかった。
ちょっと道に迷っていたら、Zepp東京の前に着いたときには開場時間を過ぎてしまっていた。コスプレをした方々はまだ多く外にいたが、主力部隊(気合の入った衣装を着て、集団で写真を撮り合ったりしている方々)はもう既に会場内に入ってしまったのかもしれない。ちょっと損をしたような気分になる。以前はコスプレにドキドキしてしまっていたが、今ではもう平気だ。コスプレを平然と受け入れられる精神は、これまでの経験の積み重ねによって鍛えられたものである。コスプレ見学も程々に、開場に入ることにした。
席は前から20列目くらいの、ちょうど1段上がった辺り。ステージからは20〜30メートル位離れているから、演者の細かい表情の確認は難しいが、前は通路だし、少しだけ高さがあるので、前方を見渡すことが出来る良席。しょこたんライブは毎回良席のような気がする。幸運に感謝。
BGMが消え、照明が落ち、暗いステージをバンドメンバーが定位置に向かう姿が見える。続いてスポットライトに照らされて、ステージの裾から、しょこたんが登場した。今までのしょこたんライブとは違って、ステージの下から突然登場したりはしなかった。ステージの中央で一礼をしたと思うと、そのまま歌い始めた。静かなバラードでライブが始まった。
このライブツアーは、震災が起きてから、サブタイトルを変更している。「今こそ団結!笑顔の輪」というものだ。仙台で行われる予定だった公演は延期となっている。事前の打ち合わせで、NGワードと決まっているのかもしれない。しょこたんは「地震」「津波」「原発」というような単語を口にすることはなかった。震災について直接語ることはなかった。それらは非常にセンシティブな問題であり、このライブ開場でしょこたんが口にするべき話でもない。もしかしたら、この大変な時期にライブなんてやっていいのか、と言う人もいるかもしれない。そういった人がいる可能性も汲みつつ、主催者側はライブをやっているし、僕達も観に来ている。観る前は僕も少し迷いがあったが、ライブを観た今なら言える、やった方がいい。大変だろうけれど、ぜひやった方がいいと思う。
ピンクのサイリウムがライブハウスを包み込んでいた。ハードなナンバーは歌われなかった。すべてが静かめの曲というような選曲ではなかったが、今日はいつもより控えめに行われるのかもしれない、仕方のないことだ、と思った。音楽はやっぱり落ち着くものだな。ライブはいいな、暖かいな。そう思った辺りで、スイッチが入った。
しょこたんが衣装チェンジのために舞台から姿を消した。その間を持たせるために、バンドは演奏を続ける。よくある光景だが、演奏の様子がいつもと違う。あれ?今日はツインギターなんだと、ここで気付く。バンドの構成を確認すると、ギター2人、ベース、ドラム、キーボード、だった。いつもより人数が多い。気がつくと2人のギターはギュンギュンと唸りを上げ、ドラムはハードなキックを刻み始めている。僕の目が急激に覚め始めたように感じた。かっこいい。非常にかっこいい演奏だ。血液が熱くなってきたのを感じる。そして、しょこたんが新しい衣装で登場して、次の曲が始まった。なんとそれが、XJAPANのサディスティック・デザイアだった!というのは、ドラムのイントロだけで、イントロ以外はちゃんとしょこたんの曲に戻ったのだけれど、僕はもう、2秒で「入って」しまっていた。これがイントロ・クイズであったら僕は即効で回答ボタンを連打し、司会者に促される前に答えていたであろう。
約15年前、僕は中学生だった。初めて自分でチケットを取ったライブが、大ファンだったXJAPANの東京ドーム公演で、悪い友達と2人で田舎からドキドキしながら東京に出てきて、2人でYOSHIKIー!と叫んだり、5万人の観客全員でエックスジャンプをしたものだった。15年経った今、激しいツーバスに打ち鳴らされて、その時の感覚が完全にフォールバックしてきた。簡単に言うと、ハイになった。
赤いライトに照らされて、しょこたんもハイになっていた。片足をモニターに乗せ、前かがみになって布のようなものをぶんぶん回しながら歌った。可愛さとかっこよさが高純度で融合していた。これはXJAPANでは出ない。この瞬間、現実が僕の記憶を超えたような気がした。そして会場全体が手に持った何かをぶん回していた。約1000人の観客全員が赤く、熱くなっているのを感じた。熱い。こんな空間がかつて確かにあったのだ、そして今ここにも存在している。
しょこたんは、「飛べ飛べ飛べ!」と言っていたような気がする。「回せー!」と叫んだ気がする。僕はもはや興奮しすぎて、正直よく覚えていない。終演後、近くで話していた女の子たちが言うには「カッコ良すぎて、まともに観ていられなかった」。可愛い振り付けの曲もやり、一方でハードな曲もこなすのだから、針が振れるわけだ。
激しいパートが一段落すると、空からハートが降ってきた。中盤はハードで来て、最後はハートが飛んできた。それらが無理なく共存できてしまうのが、本当にすごいと思った。僕はひらひらと飛行するハートを、しっかりとキャッチした。
終盤になり、いつもの事だが、しょこたんのブログ用の写真を開場のみんなで撮った。いつもと違ったのは、しょこたんが、隣の席の人と手を繋ぎましょうと言ったこと。照れくさかったが、となりのコスプレした方と手を繋いで、一緒に写った。汗ばんだ手をつなぎ合わせると、連帯感のようなものを感じた。
どんなライブでも、ライブをやったことで失われた物理的なものが戻るということはない。でも、ライブは希望になると思う。少なくとも僕は元気づけられた。
これまで、3月11日以前の様々なものが、いま現在と繋がっていないような気がしていたのだけれど、今回のライブで、体験として、改めて繋ぎ直すことが出来た。(これはXJAPANを連想した僕だけに限らないと想像する。) 過去の情熱を思い出させてくれた。あの時は悪くなかった。これからも少しは良くなるかもしれない。根拠は全くないし、冷静になれば、厳しい理由もいろいろ挙げられる。だけれど、希望を持てるような気がする。またやれるだけ頑張ってみようと思う。
ただ、直接の被害を受けた(今も受け続けている)方々に対して、何が出来るのか、これからどうして行けばいいのか。その問題と回答はこことは別の所にあるのかもしれない。僕がライブに行って、こうしてライブレポを書いてもなんの解決にもならない。僕に何が出来るのか。僕は今後ももちろん考えていきたいし、できるだけの助けになりたいと願っている。ひとまず、また募金して、大いに働こうと思う。社会の仕組みについても考えて、よい方向へ向かうように、行動して行った方がいいのだろうな。
最後に、しょこたんを初めとする関係者の方々へ。
大変な時期にライブをやるという判断は、経営云々よりも、個人的な決断が必要だったと思います。この状況で、自分たちが元気を発していこうと決意し、決行したのですね。
元気をもらいました。ありがとうございました。
P.S. XJAPANの件は興奮した僕の思い違いかもしれません。でもとても楽しかったです。
ドラムの人、最高。
その後、ツイッターで同じことを思っている人を発見しました。どうやら幻ではなかったのかも。
(この文章は後日ちょっとずつ修正いれています。)
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