夜の3時に友達を叩き起こし、病院や119に電話をかけた僕は、
これは時間が重要なポイントかもしれないと考え、
始発の新幹線で帰ろうと友人に頼んだ。
ここ岡山から地元に帰るには少なくとも5時間はかかる。
向こうで受け入れてくれる病院を見つけるのにも苦労するかもしれない。
朝までの時間を使い、iPhoneで骨折についての情報を収集する。
ネガティブな情報がたくさん収集される。
痛みで一睡も出来ないまま友人とタクシーに乗り駅へ向かった。
荷物はほぼすべて宅配便で送ってもらうよう頼んだ。
6時発の新幹線で腕を冷やしていると、7時過ぎ頃に電話が鳴った。
受診した病院からだった。
おそらく次の日の当番の医者に話したところで対応のまずさに気づいたのだろう。
電話はスタッフからかかってきたが、途中で医師に代わった。
いま新幹線に乗っていると話すと、医師はなぜか安心した感じになり、
お大事にとか適当なことを言ってすぐに電話を切ってしまった。
この医師は悪くない。ベストを尽くしたと思う。
しかし、三角巾のみで添え木を当てなかったのはまずかったし、
この後判明するのだが、紹介状にレントゲン写真を付けていなかった。
そのため、あれだけ痛い思いをして取ったレントゲンをまた取ることになった。
新横浜から横浜線に乗換え、八王子へ。
歩く度に骨に響く。骨が動いて体の中を刺している。
運がいいことに駅の構内はさほど混んでいなかった。
家族と合流し、ひとまずここから一番近いS病院へ電話した。
S病院の医師は僕が都内在住でないことを聞くと、
腕相撲の骨折は手術が簡単で、うちでなくても手術できるから
地元にしなさいと言った。
言い方がうまい。
自分の技術が優秀であるということをアピールしつつ、受診を拒否している。
だが、治療は決して簡単なものではないことは後で分かったのだった。
この医師はプレートを使用した手術を想定したのかもしれない。
腕相撲の骨折は、上腕骨の中央に近い部分に起こることが多いからだ。
しかし、僕の骨折は肘に近い場所で起こっていた。
この場所は神経が通り、プレートの手術では神経麻痺が起こる事が多い。
(ネットで見つけた文献によると7例中2例で神経麻痺。)
あるいはプレートではなく、髄内釘を考えたのかもしれない。
だが髄内釘では骨折部が下方過ぎてうまく止められないことが後に分かる。
歓迎しないという医者のところに行くはずもなく、地元の総合病院に電話をかけ
事情を話すと来て下さいと嬉しい回答が得られた。
いま八王子にいるので2時間位かかるというと驚いていた。
そして、診断。
レントゲンは腕を動かすためやはり痛く、呻きながら4枚も撮影した。
そして即日入院の判定。ようやく入院できた。
結婚式に出たままのスラックスに、上は三角巾を付けた格好で。
岡山を出てから7時間半が経っていた。
最初に治療する病院をどこにするかは非常に重要なことだ。
後で思いついたのだが、地元の病院で肘近くの骨折に強い病院はどこか、
僕は医者になった友人に尋ねるべきだった。
友人は整形外科ではないが、その友人には整形外科医はいるはずで、
各病院の体制について知っているはずだ。
手術後これに気づいてから友人に尋ねてみたが、すでに遅かった。
結果的に良かったのかどうか、答えは未だ出ていない。